
結論から言うと、このブログでいちばんお伝えしたいのは一つだけです。「古事記は子ども向けの神話集ではなく、当時の権力争いや氏族の記憶が形を変えて刻み込まれた”歴史資料”でもある」ということ。noteで連載中のシリーズでは、その両面――物語としての面白さと、その裏にある「実際にはこうだったかもしれない」という考証――を、毎回セットでお届けしています。
なぜ今、古事記なのか
古事記というと、学校の授業で少し触れただけという方も多いと思います。スサノオのヤマタノオロチ退治、因幡の白兎、天孫降臨……名前は知っていても、「結局何が言いたい話なのか」「本当にあった出来事なのか」までは、意外と語られません。
このシリーズでは、各エピソードを次の二段構えで読み解いています。
- 物語パート――原典の流れをフリガナ付きでわかりやすく紹介
- 考証パート――「実際にはこうだったのかもしれない」という視点で、考古学的な発掘成果(荒神谷遺跡・加茂岩倉遺跡・纒向遺跡など)や、古代文学や民俗学など各分野の研究者の学説、さらにはギリシア神話や北欧神話との比較神話学的な視点まで交えて掘り下げる
一つの答えに決めつけず、複数の学説をあえて並べて「両論併記」で締めくくるのも、このシリーズの特徴です。読み終えたときに「なるほど、そう考えると腑に落ちる」がいくつも生まれるように書いています。
そもそも古事記とはどんな書物か
『古事記』は、712年(和銅5年)に太安万侶(おおのやすまろ)が元明天皇に献上した、現存する日本最古の歴史書とされる書物です。序文によると、天武天皇が稗田阿礼(ひえだのあれ)に覚えさせた帝紀や旧辞といった伝承を、安万侶が文字に書き起こしたものとされています。全三巻のうち、上巻は神々の時代、中巻と下巻は神武天皇から推古天皇までの天皇の時代を扱っています。
文章は漢字で書かれていますが、日本語の語順や音を残す工夫が随所にあり、歌や人名・神名には漢字の音を借りた表記が使われています。物語として読める語り口が多いのも、この書物の特徴です。
『日本書紀』との違い
『古事記』の八年後、720年に完成した『日本書紀』は、舎人親王らが編纂した全三十巻の歴史書です。中国の歴史書にならった漢文で書かれ、年代順に出来事を並べる形をとり、対外的な「正史」としての性格が強いといわれます。
これに対して『古事記』は、一つの筋を通して物語として語る点が特徴です。また『日本書紀』は、一つの出来事について「一書(あるふみ)に曰く」という形で複数の異伝を並べて記します。同じ神話でも書物によって筋や登場人物が違うことがあり、このシリーズで諸説を並べて紹介しているのは、原典自体が複数の伝承を残しているからでもあります。
『古事記』の三巻をざっと見渡す
『古事記』は上・中・下の三巻でできています。上巻は、天地のはじまりから、国生み、天の岩屋、出雲の神話、天孫降臨、海幸彦と山幸彦まで、神々の時代の物語です。中巻は神武天皇から応神天皇まで。神武東征をはじめ、崇神天皇の時代、ヤマトタケルの遠征、神功皇后の物語などが収められています。下巻は仁徳天皇から推古天皇までで、仁徳天皇の「民のかまど」、雄略天皇の粛清、顕宗天皇・仁賢天皇の兄弟、継体天皇の即位などが続きます。
ここで一つ、知っておくと読みやすくなる点があります。下巻の後半になると、物語の記述は少なくなり、天皇の系譜や后妃・皇子女の記録が中心になっていくといわれます。物語として読める範囲は、おもに上巻から下巻の前半までです。このシリーズやブログが、神々の時代から、仁徳天皇や雄略天皇、継体天皇あたりまでを中心に取り上げているのは、そのためでもあります。
初めて読む方へ――三つの楽しみ方
一つ目は、まず物語として読むことです。神々の名前は長くて覚えにくいのですが、誰が何をしたかという筋だけ追っても十分に面白い話ばかりです。二つ目は、名前の読み方を気にしすぎないことです。このシリーズでは難しい神名や地名にフリガナを付けていますので、読み方に迷ったらそれを頼りにしてください。
三つ目は、「なぜこの話がこう語られたのか」を少しだけ考えてみることです。ある氏族の祖先として語られる神、征服された地域を思わせる物語など、話の裏には当時の人々の事情が透けて見えます。そこに目を向けると、古事記が単なる昔話ではなく、歴史資料としても読める理由が見えてきます。
これまでの連載ラインナップ
シリーズは時系列順に、次のように続いています(クリックするとnoteの本編に飛びます)。
- 古事記と日本書紀の違い(入門編)
- 黄泉の国訪問
- 禊祓(みそぎはらえ)
- 天岩屋戸――アマテラスの岩戸隠れ
- 須佐之男命(スサノオ)
- 稲羽の白兎
- 大穴牟遅神の受難――八十神の迫害から大国主への改名まで
- 大国主神の誕生
- 国譲り
- 葦原中つ国の平定
- 天孫降臨――邇邇芸命
- 海幸彦・山幸彦
- 神武東征
- 欠史八代と崇神天皇
各記事の末尾には「前回のお話はこちら/次回のお話はこちら」というリンクを設置しているので、途中の回から読み始めても、前後のつながりを追いかけやすくなっています。
このブログで読める、対応する記事
noteの連載と同じ話題を、このブログでも物語と考証をまとめて読めるようにしています。気になる回から、ブログの記事に進んでみてください。
- スサノオ(須佐之男命):スサノオはなぜ「暴れ者」から「英雄」になったのか
- 天孫降臨:天孫降臨――邇邇芸命はなぜ、そしてどこへ降りたのか
- 海幸彦・山幸彦:海幸彦と山幸彦、豊玉毘売と「見るなの禁」
- 神武東征:神武東征――若御毛沼命は、なぜ大和を目指したのか
- ヤマトタケル:父に見捨てられた十六歳――ヤマトタケル、九州・熊曾への苦難の道のり
- 仁徳天皇:「民のかまど」に煙は立つか、嫉妬に燃えた皇后――石之日売命、大和を出奔す、恋か、それとも反逆か――速総別王と女鳥王の悲劇
- 雄略天皇:目弱王の変と、大悪天皇雄略の粛清、雄略天皇と一言主大神の邂逅、雄略天皇と引田部赤猪子の物語
- 顕宗天皇・継体天皇:隠れ里の皇子たち、顕宗天皇の知られざる仇討ち、血筋の断絶を越えて――継体天皇、即位の謎
どんな人に読んでほしいか
歴史や神話が好きな方はもちろん、「学校の授業で終わった古事記を、大人になってから読み直してみたい」という方にこそ向いている内容だと思います。専門用語はできるだけかみ砕き、代わりに「なぜそう考えられるのか」という理由の部分を厚めに書いているので、予備知識がなくても楽しめるはずです。
続きはnoteで
このブログでは、今後も新しいエピソードが公開されるたびに、その回の見どころをこうして要約してご紹介していく予定です。全文はnoteの連載でお読みいただけます。
▶ note連載はこちら:https://note.com/fast_spirea1280
次回は、これまでの記事の中から特に反響の大きかった回を一つ取り上げて、より詳しくご紹介する予定です。
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